[ テーマ: 住まいづくり情報 ]
2011年12月18日08:00:00
こんにちは、若松です。
「火育」という言葉をご存知ですか?
「火育」とは、火を使う体験を通して脳を活性化させ、
豊かな人間性を育むことです。
子どもだけではなく、全世代を対象にしています。
数十年前は、自宅の庭や家庭用の焼却炉で、
燃えるごみを燃やしていました。
その頃の子どもは、ごく普通に手伝っていたので、
火の怖さや扱い方を体得していました。
ですが、現在は自宅でゴミを燃やすのは禁じられ、
オール電化が普及した影響もあり、火の扱い方を知らない子どもが増えています。
お母さん世代の中にも、マッチの火を風から守ることを知らない人もいるとか。
先日の震災の時、集めた木材に火をつけて暖を取ったり、
料理しているシーンを見ました。
小枝や紙など、燃えやすいものについた火を木材に移し、
木材の量で火の大きさを自在に操っています。
そのように、私たちの世代は火の扱い方を心得ています。
でも数十年後、もし災害が発生した時に、
火の扱い方を知らない人ばかりだったら?
ただ救助を待つことしかできないかもしれません。
そう考えると、火育の大切さを実感します。
ところで、
料理することが脳に良いことはご存知ですよね。
献立を考えて、沢山の商品から良いものを見分けて買って、
持ち帰って料理する。
栄養・彩り・量・盛り付け方を考えるなど、頭も体も使うので、
物忘れが気になる方のリハビリにも役立てられています。
「脳を鍛えるシリーズ」でおなじみの川島隆太教授によると、
火を扱う行為は、前頭前野を活性化させることが分かっています。
火を使うことで、より人間らしい脳が育つのではないかと、現在研究中です。
今回この記事を書くきっかけになったのは、
スタッフに、ある話を聞いたからなんです。
ある夜、スタッフの小学生の子どもたちが花火をしたいとせがみました。
上の子は6年生なので、スタッフが
「あなたが責任者になって2人で花火をしてみてごらん」
と言いました。
上の子は、バケツに水を汲んで、マッチに火をつけました。
炎をロウソクに移そうとするのですが、なかなかうまくいきません。
すぐに消えてしまうんです。
マッチの角度を少し変えるだけで、火は長持ちするのですが、
彼女はそれを知りませんでした。
それに、先端の炎が軸に伝わっていくのが怖くてたまらなかったんです。
スタッフがお手本を見せると
「うわあ、火が消えない。上手だねえ。」
と感動していました。
花火が終わった後も、
「火ってきれいなんだね・・・」
と、揺らぐ炎に見入っていました。
そこでスタッフは、下の子にもマッチを使わせてみることにしました。
触ることを許されていなかった下の子は、お姉さん気分で大張り切り。
下手なつけ方をしてヤケドをしたんですが、泣き言も言わずに再挑戦。
納得のいくまで練習できたので、満面の笑みを浮かべていたそうです。
反対にスタッフは、火育をしていなかったことに気づいて猛反省。
火を扱う時の服装や注意点など、いろんなことを話し合いました。
これからも、親の目が届くうちに、できるだけ火を扱う体験をさせるそうです。
人類は、80万年以上前から火を使っていました。
でも、ほんの200年前までは、火を起こすのに大変な労力が必要でした。
そのため、一度起こした火を絶やさない工夫も生まれました。
そんな火起こしを簡単にするために、最初にマッチが考案されたのは1827年。
日本でマッチの生産が始まったのは、1875年。
それまで輸入品を使っていたのですが、
小箱1個の値段は、米6kgの値段と同じくらいと、超高級品でした。
ですが、現在ではマッチの出番は激減しています。
動物とヒトとの決定的な差は、火を扱えるかどうかだといいます。
火を扱えないヒトは、扱えた世代と比べて退化しているのかもしれません。
住まいは、機能面ではどんどん進化しています。
ただ、感性を鍛えるという面では、進化しているとは言い難いものです。
その中で、次の世代に『火』の恩恵や災いをどう伝えるのか。
生きるために大切なことなので、一度しっかり考えたいものですね。
では、また。
追伸 感想や質問などのメールは大歓迎です。
ただし、ネガティブなメールは萎えるのでいらないです。
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